河川敷の“ホームレス犬” 老いてから救出、初めての室内暮らし

河川敷の“ホームレス犬” 老いてから救出、初めての室内暮らし

長年、ホームレスと一緒に河川敷で暮らしてきた犬がいる。名前は「ジロー」。世の中から身を隠すように草むらに住み、暑さ寒さをしのいで10余年。しかし、台風で住んでいた小屋が流されてしまった。すでに目がよく見えず耳も聞こえなくなっていた老犬ジローは、「これからは頼む」と、ホームレス男性からボランティアの女性に託された。そのジローがどうしているか、会いに行ってみた。

大きな雑種犬ジローは、エアコンのきいた居間のダイニングテーブルの下に横たわっていた。猫が横からちょっかいを出しても、気にするでもなく寝ている。

神奈川県内にあるYさんの自宅。2世帯住宅で、階下に妹さんが住み、外階段を上がった2階に60代のYさん夫妻が住んでいる。

「この子がジローさん。そこ床がお気に入りなの。歯茎が悪くて、昨日、動物病院に行ったのよ」

少し腫れた顔をのぞくと、目をあけて、ふいにこちらを見上げた。

自然を愛するジロー(今年8月、Yさん宅の庭で)
自然を愛するジロー(今年8月、Yさん宅の庭で)

「ジローさんは一度も怒ったことがないの。怖がりもしない。でも、『俺はどうしたんだ? なんでここにいるんだっけ』って顔をしているでしょう。認知症も進んでいるの」

Yさんの家には、幼い頃から犬や猫がたくさんいたという。結婚して転勤を経て22年前に今の一戸建てに越してきてから、「放っておけない」動物を保護するようになった。現在はジローを含めて犬が4匹、猫が15匹いる。飼い主が飼えなくなったり、手放したり、行き場をなくした動物たちだ。

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“世捨て人”に寄り添う

新入りの長老ジローは、河川敷で生まれ育った犬だ。家を捨て、社会から離れ、家族とも別れて、手作りの小屋やテントで暮すホームレスの男性たちに、可愛がられてきたという。

「20年以上前、河川敷に野良犬がたくさんいたのよ。ホームレスの人たちが一匹ずつ繫いでパートナーにしていたのだけど、ジローさんは、そこで繁殖した最後の1匹。生まれて7~8年、あるおじさんと寝起きをともにして、家族のように暮していた。空き缶を売ったりしたお金でゴハンをもらってね。でも、そのおじさんが施設に入ることになってジローが残った。それで別のおじさんが『じゃあこの先は俺がこいつを可愛がる』と世話をはじめたのだけど……」

ジローは生まれ育った小屋に長い紐でぽつんと繋がれて、少し離れた場所に住むホームレス男性がゴハンをあげに通った。ただ、食欲は満たされても、1匹で過ごす時間が多かった。犬の存在に気付いたボランティアが様子を見に行っても、「俺が見る、大丈夫だ」の一点張り。ボランティアが説得して去勢手術を受けさせ、元の場に戻して見守るようにゴハンの援助をした。犬を巡ってホームレスとボランティアがもめることも少なくなかったという。

そんな生活に去年の秋、終止符が打たれた。川が氾濫して、小屋が流れされたのだ。ジローは助かったが、水に浸かり弱ってしまった。そのため男性はようやく、馴染みのボランティアに「ジローを何とかしてほしい」とSOSを出して、保護された。

保護したボランティアから、ジローの晩年を頼まれたのがYさんだった。

「ボランティアがおじさんと待ち合わせてジローさんを受けとり、そのまま動物病院に連れて行って、検査して、そこからまっすぐうちにきたのよ。初めてジローさんを見た時、胸がキュンとしたわ。体はガリガリ、でも表情が穏やかでね。いろんなことがあっても風に吹かれて、健気に生きてきたのね」

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